第1章

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こんな時に笑って言う奴なのだ。 卑怯者め…と唇を噛みしめ胸を締めつける感情に耐える。 「何も言うな…行くぞ」 苦しくて絞り出すように告げた。 雑念がよぎりそうになるが振り払い、キリ…っと刀を構え握りしめる。 相手も先ほどとは変わり、感情の消えた鋭い眼差しで刀を構える。 いつも見ていた顔だ。どうあっても勝つことが出来なかった。 お前に全力で負けるならば本望。 よく知った間合いで互いが走りだす。勝負は決まったと思った瞬間。 ドオォっと春の風が巻き上げ、満開の桜が悪戯に舞い踊る。 「………あ…」 花弁が相手の目を覆ったのが見えた。
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