過去 藍墨色の夜(花音目線)

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薫の孤独。 私の孤独。 多分、薫が大人な分だけ、その孤独をいっぱい感じてるだろうに。私のそれとは比べものになんないくらい。 昔から友達に疎外感を感じた時は薫は私の気持ちを敏感に察知して気遣ってくれた。 人のやっかみってイヤなもので。 薄暗い森の中でお化け屋敷の様な家に住んでいる、風変わりな貧乏一家が、 割と由緒ある家柄で、 実は歴史的文化的価値を持つ庭と茶室を所有していて、 キチッとした形で世間に知らしめた時、 見下していた大人達は、感情がやっかみになり、 親を通じて子供に伝染して、一番弱い自分がその対象で攻撃されてたんだ、 って、 教えてくれたのは薫で、その事にも納得した。 だから、同世代の子と接するのはすごく苦手で。 いつも壁を作ってた。 だからこそ、今仲良くなれる友達が出来たから薫は後押ししてくれているんだと思う。 私が抱いている孤独感を自分の様に感じているから。 でも、薫の孤独感はそんなものではない。 黒瀬という家に生まれてはいけない子のように育てられ、ある日手のひらを返されたように後継者に指名された。 今の薫にとって、プライベートで親密になり得る女の人はいるのだろうか? 薫を狙ってくる女の人達は、薫自身ではなく、黒瀬家と言うステイタスを狙っているくらい、まだ子供の私でさえ分かる。 それに輪をかけて、薫のおじいちゃんが後継者が欲しいのか、嫁探しに躍起だ。 おじいちゃんも良い人なんだけど………。 薫は独身を貫くだろう。 黒瀬の一族経営を大否定しているから。 表には出さないけど。
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