過去 藍墨色の夜 Ⅱ (花音目線)

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「……で? 今後の事を考えてたのかな?」 ニッと笑った柊さん。 「エッ……と。 まだ、決心がつかなくて、 でも、ずっと考えて、考えて出した答えだから。 ただ……。」 言い渋っていると、 「黒瀬君と離れるのは嫌?」 いきなり、薫の事を言われてびっくりして顔を上げた。 「あははっ、私、黒瀬君と同じ高校で同級なのよ!」 ………まさか、薫に筒抜けだったとか? 「守秘義務があるから、花音ちゃんの事は何にも話してないわよ、安心して。」 私の気持ちを汲み取ったのか、明るくそう言ってウィンクした。 「黒瀬君も同じ時期にアメリカに留学して行ったわね。 似たような理由で、まぁ、言うなれば武者修行?」 そうだ、黒瀬君も経営者になるべく長い間、留学していた。 て、いうか、私はひとっことも留学するって柊さんには言っていませんが。 そう思いつつ、最初に薫と会った時の事に思いを馳せた。 多分、数年は薫に会えないと思う。 ずっと、思い悩んでいた一つだった。 「あの時の黒瀬君はとても追い詰めらていたと思う。花音ちゃんのようにね。 彼の気持ちに寄り添っていたかったけど、私じゃないと思った。 背中を押したり、見守ることは出来てもね。 でも、いつか必ず彼に寄り添える人が現れるって思ってたんだ。」 ???ん?ん?なんか引っかかるワードてんこ盛りの様な気がするんだけど。 「フフフっ、私ねー黒瀬君に告られた事あるんだよー。」 どうだ凄いだろー! って、ドヤ顔の柊さん。 エッ、エッエーーーー!!! あっけらかんとしている柊さんに、ジェラシー的な物は感じなく、意外だという驚き。 薫が自分から告った事があるなんてーーー。 そこは意外。 相手が柊さんなら、ちょっと納得。 この、抜け感、癖になりそう。
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