最終便は、一つ前

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そんなことを考えていた時に、ちょうどホームに電車がすべりこんできた。 よかった!電車、遅れてたのか。 俺は、ラッキーだ。 この寒空の下に外で一夜を過ごしたら死んでしまう。 俺は電車のドアが開くと、温かい車内に駆け込んだ。 すると、その車両に居た、全員が一斉に顔を上げて俺を見た。 あれ?俺、そんなに騒がしく乗り込んだっけ? 違和感を感じた。 一人は、こんな時間にも関わらず、女子高生。 もう一人は、痩せてくたびれた感じの中年サラリーマン。 もう一人は、不潔で何日も風呂に入っていないような格好のおたくっぽい青年だった。 全員、一様に表情は暗い。 だが、一瞬俺を見ただけで、興味無さそうに、女子高生はすぐにスマホに目を落とし、サラリーマンは腕を組み目を閉じ、青年は、ぼんやりと窓の外に視線を外した。 十分に座れるスペースがあったので、俺はそれぞれの人間と間隔をあけて座り、安堵した。 ようやくあの好きでもない女との擬似恋愛から解放されるし、俺はもう誰にも干渉されない。 自由だ。 俺は苦笑いした。 自分から近づいておいて、何だが、この俺があの女に惹かれると思うほうがあつかましいだろう。 もうすぐ三十路女で、俺はまだまだ二十歳そこそこだ。 なるほど、焦ったアラサーは色気たっぷりフェロモンを発してはいたが、所詮オバサンだ。 金以外、用事があるわけないだろう。 あんたなんて地獄に堕ちればいいだなんて、古臭い捨て台詞だな。 そうバカにしていた。 あの言葉を聞くまでは。 途中からおかしいとは思っていたのだ。 あまりにも車窓は変わらないし、電車にしては、延々と真っ直ぐな道をひたすら走っていく。 異変に気付いたのは、あまりにも駅に着かないことだった。 いつもであれば、もうそろそろ俺の家の最寄の駅に着いていい頃だった。 乗り過ごしたかと窓の外を見たが、相変わらず、街の灯りが流れて車窓の後ろへと飛んで行く。 一向に駅の名前のアナウンスもない。 俺は不思議に思い、一番先頭まで車掌を探しに行った。 運転士の後姿は見えるが車掌はいない。 仕方なく、俺は、前に座るサラリーマンに話しかけてみた。 「あの、今どこらへんを走っているんでしょうか。〇〇駅は通り過ぎちゃったんですかね?」 そう訪ねると、その男は、さあ?とだけ言って黙り込んでしまった。
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