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うだるような暑さが私立世末学園を襲う。夏の日差しは午後をむかえ、また一段とキツくなっていた。屋外プールはすっかり生温くなり、グラウンドでは陽炎が踊っていた。
読んでいた本に、一粒の汗が落ちた。じわりと文字がにじみ、次のページにまで染みを作りだす。そして拭う暇も与えず、また汗が落ちる。
やはり無理ね。長く美しい黒髪をかきわけ、桃源今日子は文庫本を閉じた。
ここは私立世末学園の図書室。しかし校舎のとなりに別館として建てられたため、図書室より図書館と呼んだほうが正しいのかもしれない。
一階と二階に分かれたフロアには、規則正しく本棚が並び、専門書からマンガまで豊満な種類の本が隙間なく埋まっていた。
読書好きの今日子は放課後になると、必ずと言っていいほど通っていた。しまいには、二階フロアの一番奥のテーブルが彼女専用になってしまうぐらいだ。
が、この暑さにさすがの今日子も参っていた。絶えず流れる汗、汗、汗。窓がすべて割れて熱風の入りこむ空間は、まさに蒸し風呂である。これでは読書に集中できるはずもない。
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