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「……」
「なあ。機嫌直せよ」
「……」
「帰りにポルノ文学買ってやるから」
「え? ホント!?」
さっきの怒りはどこ吹く風。その一言で、今日子は瞳をきらきら輝かせ、あっさり振り向いた。テーブルを倒す勢いで、下卑太のほうへ身を乗りだす。頬を夕暮れのような朱色に染め、やわらかそうな唇を緩ませて。
なんて笑顔してやがる。下卑太は両手を肩まで挙げ、やれやれと首を振った。
「けど、ハードカバーはやめてくれよ。高すぎる」
「そこまで足もと見ないわよ。とにかく本屋に行きましょ! 今すぐに!」
下校時刻を知らせるチャイムが鳴る中、ポルノ文学少女は鼻歌交じりに歩きだした。
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