15人が本棚に入れています
本棚に追加
午前二時。分厚い雲が、月を覆い隠した。
昼間とは違う、暗闇が支配する私立世末学園。
点滅する非常灯が照らす廊下に二人の足音が響いていた。ガラスの割れた窓から吹きこむ生ぬくい夜風が、彼らの頬を撫でては通りすぎていく。
「一つ聞いていいか?」
それを振り払うかのごとく、一人が沈黙を破った。
「なんだい?」
話しかけられた、もう一人が優しく聞き返す。
「いったいなにが悲しくて、真夜中の学校に野郎二人で忍びこまなきゃならねえんだ?」
「さっきも言ったとおり、オカルト研究会の実地調査のためじゃないか」
「あのなー。そのオカ研の部員じゃないって、俺は言ってんだよ」
「知ってるとも。僕のオカルト的見地からすれば、きみはむしろ研究対象になりうる存在だよ、下卑太くん」
「はあ?」
下下下卑太(げげ げびた)は困惑の表情で相手の顔を見た。
黒縁メガネのブリッジを中指で押さえ、オカルト研究会部長の御不浄聖(ごふじょう ひじり)は、フッと知的な笑みをこぼした。
最初のコメントを投稿しよう!