私立世末学園雑話録『ルナティック野郎ども』

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 午前二時。分厚い雲が、月を覆い隠した。  昼間とは違う、暗闇が支配する私立世末学園。  点滅する非常灯が照らす廊下に二人の足音が響いていた。ガラスの割れた窓から吹きこむ生ぬくい夜風が、彼らの頬を撫でては通りすぎていく。 「一つ聞いていいか?」  それを振り払うかのごとく、一人が沈黙を破った。 「なんだい?」  話しかけられた、もう一人が優しく聞き返す。 「いったいなにが悲しくて、真夜中の学校に野郎二人で忍びこまなきゃならねえんだ?」 「さっきも言ったとおり、オカルト研究会の実地調査のためじゃないか」 「あのなー。そのオカ研の部員じゃないって、俺は言ってんだよ」 「知ってるとも。僕のオカルト的見地からすれば、きみはむしろ研究対象になりうる存在だよ、下卑太くん」 「はあ?」  下下下卑太(げげ げびた)は困惑の表情で相手の顔を見た。  黒縁メガネのブリッジを中指で押さえ、オカルト研究会部長の御不浄聖(ごふじょう ひじり)は、フッと知的な笑みをこぼした。
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