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一人じゃ怖いって白状すりゃいいのに。ガタガタ震える聖の手をチラと見やり、下卑太はあることにふと気づいた。
「……ところで、さっきから聞こえる、この音はなんだ?」
ばしゃ。ざんぶ。ばしゃ。ざんぶ。
「水か?」
「ご名答。正確には、水を叩く音だろうね」
待ってましたとばかりに聖は語りだす。
「数週間ほど前からだ。夜な夜な学校のプールから音がする、という噂を耳にするようになってね。それで、ある日、とある生徒が肝試しがてらに見にいったそうだ」
「で?」
「すると、真っ暗なプールの中を黒い影が猛スピードで泳いでいたらしいのだよ」
「ふうん」
「……まさにオカルト的事象と思わないかい?」
「思わねえよ」
「まあいい。先を急ごうか」
二人は、屋外プールへとつづく渡り廊下へ移動した。
ばしゃ。ざんぶ。ばしゃ。ざんぶ。目的地に近づくにつれ、音はじょじょに大きく、はっきりと彼らの耳に聞こえてくる。
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