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その教師は、私立世末学園の教師の中でも特に浮いていた。背中と足裏にあるブースターからオレンジ色の炎を吹きだしながら。
鎧出衛(よろいで まもる)は今朝もパワードスーツ姿で出勤していた。そのフォルムはさながら特撮ヒーローである。
高さ百八十センチ・重さ百二十キログラムのボディはダイヤモンドコーティングされた重装甲だが、内蔵された各種センサーにより動きは滑らかだ。これにより、人間と同じ動きが可能な仕様となっている。
「暑くないんですか? 鎧出先生」
新人教師の高畑がひたいに汗をためて疑問を口にした。
それもそのはずで、彼らは現在、真夏の炎天下、校門前でのあいさつ運動に励んでいる最中であった。生徒たちにあいさつの習慣をつける運動なのだが、教師陣からすれば拷問でしかない。
「ちっとも。空調管理システムが作動しているからね」
パワードスーツ内は適度な温度で調整されているため、暑くも寒くもなかった。
「ずるい。こうなりゃ僕もパワードスーツ買っちゃおうかなー。見てくださいよ、登校時刻までまだ十五分もある。これじゃ僕たちのほうが熱中症で倒れてしまう」
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