私立世末学園雑話録『パワードスーツ先生』

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 高畑が腕を差しだし、ご自慢のブランド時計をこれみよがしにチラつかせる。なんでも半年分の給料を使って買ったらしい。  しかし鎧出はそんな高畑のアピールなど屁とも思っていない。彼の着ているパワードスーツの値段は十年分近くの給料と同じ。そのことを高畑に告げれば、泣いて悔しがるだろう。 「だったら、S社のパワードスーツがオススメですよ。割とリーズナブルな値段で性能もそこそこですから」  とは言え、給料八年分は覚悟しなといけませんが。最後までつづけず、鎧出は密かに嘲笑する。 「にしても遅いですね、あいつら。もう十分前なのに」  イラついたようすで高畑が愚痴る。他の生徒たちはとっくに登校している中、三人の生徒だけがまだ姿を見せていなかった。 「いや、きましたよ」  鎧出が示した方向。田園がつづく、舗装されていない道に砂埃が巻き起こっている。甲高いエンジン音が重なりあい、けたたましい爆音が響く。  鎧出はすぐさまパワードスーツの望遠機能を使う。目の前のモニタが拡大されていく。砂塵の中に三つの影が確認できた。
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