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「…でもその着物、」
ユミが追い討ちをかける。
「…まだ呪いが残っているみたいですから無理に脱ごうとしても当分脱げて暮れそうにありませんわね…」
…怖いこと言わないでよぉ…
脳裏に昨日からの恐ろしい出来事が蘇り智美は思わず目をつぶって縛られた身体をすくめた…
「…呪いが解けるまでそうして置いてもらうしかありませんね…」
…まじですか?ユミちゃんまで何てこと言ってくれてるの?…もう丸一日以上縛られっぱなしなのよ…
「くぅーん…」
しかし、縋るようにレイを見上げる智美の視線をはねつけるようにレイは言い放った。
「私はそのつもりよ。…いや、この子の妖力がまるでレンズのように相手の呪いを惹き付けてるらしいのよ。…おかげで他の子たちは解放できたんだけど…こいつはどうも手こずりそうだわ。覚悟するのね。」
「…相手は誰か判ったのですか?レイさま。」
ユミの問いに対しレイは無言で首を横に振った。
その時だった。
その瞬間レイの表情に過ぎった冷酷な微笑に気づいたのは智美だけだった。
…何?!今の…
智美の背筋に冷たいものが走った…蔵から救出されてから今までにも何回か感じた小さな違和感の数々が、その冷酷な微笑を核にして智美の心の中に消し去ることのできない疑惑として急速に結晶化し始める…
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