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いつもの通り学校へ向かった。
廊下を歩いてると前から見知った歩き方。
こちらを見てニヤニヤ近づいてきた。
「よう、死にそこない。今日はなんか持ってんか?」
威圧的な奴。
お握りとコロッケ、ジュースの入ったビニール袋を差し出した。
「飯ちゃんと食べなよ」
もう、こわくなかった。
彼を救う力は無いけれど、たまに僕の弁当を分けることくらいなら出来る。
奴は驚いた顔で袋を受け取り、今日はそれ以上なにも言ってこなかった。
教室に入ると皆が興味津々に僕を見る。
電車での件は噂になってるのだろう。
「体もう大丈夫?」
可愛い笑顔で心配そうに声をかけられる。
彼女の顔を見てから笑い返した。
「ありがとう。大丈夫だよ」
なんのドキドキもない。
何かが僕を変えていた。
周囲も気づいたらしく、あれ?といった顔でざわつく。
彼女も想像と違う反応だったからか戸惑っていた。
もうそんなことはどうでもいい。
消えてる間、気づいたことが沢山ある。
彼女を通り越して自分の席へ座った。
以前と違うのはきっと、透明人間になる前から消えていた【僕】を取り戻せたからかもしれない。
真っ直ぐ前を見て小さく笑った。
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