消えて見つけたもの

7/7
前へ
/7ページ
次へ
いつもの通り学校へ向かった。 廊下を歩いてると前から見知った歩き方。 こちらを見てニヤニヤ近づいてきた。 「よう、死にそこない。今日はなんか持ってんか?」 威圧的な奴。 お握りとコロッケ、ジュースの入ったビニール袋を差し出した。 「飯ちゃんと食べなよ」 もう、こわくなかった。 彼を救う力は無いけれど、たまに僕の弁当を分けることくらいなら出来る。 奴は驚いた顔で袋を受け取り、今日はそれ以上なにも言ってこなかった。 教室に入ると皆が興味津々に僕を見る。 電車での件は噂になってるのだろう。 「体もう大丈夫?」 可愛い笑顔で心配そうに声をかけられる。 彼女の顔を見てから笑い返した。 「ありがとう。大丈夫だよ」 なんのドキドキもない。 何かが僕を変えていた。 周囲も気づいたらしく、あれ?といった顔でざわつく。 彼女も想像と違う反応だったからか戸惑っていた。 もうそんなことはどうでもいい。 消えてる間、気づいたことが沢山ある。 彼女を通り越して自分の席へ座った。 以前と違うのはきっと、透明人間になる前から消えていた【僕】を取り戻せたからかもしれない。 真っ直ぐ前を見て小さく笑った。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加