もう、帰れない

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5月、新学期の緊張感も過去のものになり、生徒の殆どが慣れ始める季節。川里勇希もその1人だった。 勇希は、授業中に教室の1番後ろの席から外の様子を見つめていた。外では、2年生だと思われる先輩たちが野球をしていた。 ……いいな。 勇希は、中学3年の春まで野球部に入っていた。でも、監督を殴ってしまい退部したのだ。それからは、一度もボールに触れていない。 別に、部活をやめたからと言って野球自体が、嫌いになったわけではない。むしろ、野球は好きだ。 勇希自身は、別段何か特別非出ているものは無い。野球好きの唯の、一般的な高校生である。 「なあなあ、川里」 「何?」 隣の席のクラスメイトが話しかけて来た。坊主頭の為野球部だというのはわかった。 「川里って、野球やってた?」 「…うん、小中の間はしていたよ」 「高校では、しないの?」 「うーん、興味無いな」 また、勇希は外の様子を見つめた。
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