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男の声がした。
そして、その声がしたと思われるドアが勇希の元へ、降りてきた。ドアの外見は、いたってシンプルなピンク色のドアだった。小さい赤いハートが、書いてあった。
「迷うな、アリス」
「早く私を信じて開けるのだ」
「何を迷っている。アリス…」
……アリス?
軍服の男にも、アリスと呼ばれた。このドアも、勇希の事をアリスと呼ぶ。
「俺は、アリスじゃ無い」
勇希は、ドアに話しかけた。でもドアは、勇希の言葉に反論した。
「何を言っているんだ。君が、アリスだからこの空間で迷っているんだろう」
「俺の名前は、川里勇希だ!アリスなんて名前では無い!」
勇希は、大声で叫んだ。
でも、ドアは落ち着いた声のトーンで話し始めた。
「まぁ君が、アリスと言う事を認めなくてもいい。だから、早く私を信じて開けなさい」
「……」
勇希は、ブルブルと手を振るえながら持ち手を握った。
……ガチャ
「さあ、アリス…。こっちへおいで」
勇希は声に誘われるままに、ドアの向こう側の世界へ1歩踏み入れた。
ドアは、パタンと静かに閉まる。
「……もう、帰れない」
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