25人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
みっともなく先生の前で泣きながら、
ふと見えたのは
きつく握られ細かく震えている拳。
「泣かされて、俺のこと嫌いになっただろ?
もう待つとか云わないよな。
……じゃ」
……先生?
そんなこと云うのになんで、
声が震えてるんですか?
私の疑問に答えることなく、
先生は立ち去ってしまった。
佐上先生は私――相原和音が通う高校の、
古典教師。
二十八歳、独身。
彼女は多分、……いない。
高二になって先生が古典の担当になってから、
ずっと好きだった。
先生と話すきっかけが欲しくて
毎日のように参考書を手に質問に通い、
「頑張ってるな」って
褒めてくれるのが嬉しかった。
思いが募って
バレンタインにチョコを渡したけど、
……結果は撃沈だったわけで。
それどころか、「迷惑だ」って。
最初のコメントを投稿しよう!