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でも、
それで先生のことを諦められたかというと、
無理だった。
だって、私のことを泣かせた先生の方が、
……つらそうな顔をしていたから。
だから私はその後もずっと先生を想い続け、
卒業という春を待っていた。
「相原、ちょっと」
高三の文化祭が終わり、
みんな本格的に受験勉強を始めた頃。
放課後、佐上先生に呼ばれた。
先生はちなみに、私のクラスの担任だ。
「おまえ、これ、ふざけてるのか?」
連れて行かれた進路指導室で
私の目の前に突きつけられたのは、
このあいだの進路希望の用紙。
「ふざけてなんて……」
「ならなんで希望が全部、
近場の短大や専門学校になってる?
おまえの成績なら四大余裕で狙えるだろ?」
「……家の都合、です」
……はぁーっ、
大きなため息をつくと先生は眼鏡を外し、
鼻の付け根を揉んだ。
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