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スプリンクラーが起爆スイッチになっている可能性が高い以上、それを使って陽動作戦を実行することは不可能になった。
また同時に、遠隔操作で爆弾を起爆されるのも防がなくてはならない。
このままただ手をこまねいていれば、やがて警官隊が装備を固めて乗り込んでいく。
そうなれば、相手の思うつぼ。
――爆発だ。
「どうする?」
低く聞いてくる龍一の声は、心なしか弱気になっているように聞こえる。
現場で描いた作戦が、犯人の敷いたレールの上なら、龍一にはなす術がない。
八方ふさがり。
すると高広は、
「お前さんは、体育館に爆弾が仕掛けられていないってことを調べてくれた。それだけでも十分収穫があったぜ」
「気休めはいい」
作戦失敗を慰めるセリフだと思うと、情けなくて聞いていられない。
一瞬、通信を切ってしまいたくなった。
すると高広は、
「ばかやろう。校舎内で確実に安全な場所がある情報なんて、どんだけの価値があると思ってんだよ。それならこっちにも、やりようがあるってことよ」
インカムの向こうで、高広の口角があがっている。
咥えたタバコの先がピンと上を向いていた。
「空から魚が降ってくるなんてシュールリアリズムを体験したんだ。もうひとつ踏み込んだ人生最悪の悪夢を、こうなりゃ追求してもらおうじゃねーか」
続いて龍一のイヤホンに、
「ニシシ……」
神経を逆なでするような、高広の笑い声が届く。
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