1 学校占拠

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「誰にもばれずに校内に単身侵入。犯行グループをたいした怪我もさせずに制圧して、ついでに爆弾を見つけて処理も出来る男は、お前しか思いつかなかったんだよ」 高広の言葉に、 「かいかぶられたものだ」 龍一は返事をするが、内心、 「それも当然か」 と諦めている。 今、高広が言ったことを100%体現できる人間など、龍一自身をおいて他にいない。 高広が告げる要求は、ひどく厄介なことだが、 「そういう条件は、俺がこの件を承知する前に、ぜひ述べてほしいものだ」 龍一はひとこと文句を言っただけで、ソファーを立ち上がる。 「イワシは落ちるのか?」 そして、それだけはひどく不快だと言いたげに重ねて尋ねれば、 「ああ、あと1時間後だな。巻き上がったところまでは確認した」 高広はパソコンを操りながら言う。 「新しいスーツがとりあえずの報酬だ。その世にも珍しい現象と同時に乗り込むことにする」 龍一が告げれば、高広はちょっと目を見開いて、 「いい格好しいのお前さんが、えらく不格好な作戦を選択するじゃないか」 たったひとことで龍一の考えをすべて読んだように驚いてみせた。 龍一は、高広のわざとらしい仕草こそが不快だと眉をしかめ、 「俺に魚が降る情報を教えた時点で、全部お前の戦略だろうが」 高広はその言葉に、降参と両手をあげる。 「準備は整ってる。このビルに向かってくれ」 校舎のホログラフの隣に地図を浮かび上がらせる。 「抜け目のないやつだ」 龍一は呆れたように言って、二度と高広を振り返ることはなく歩いていく。 背中を向けたままで、 「まあ今回は大サービスだ。この借りはでかいぞ」 捨て台詞を吐いて秋場家から出かけて行った。
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