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2 立てこもり犯
空から降ってくるイワシと共に、世にもバカバカしい作戦は決行された。
誰にも予想できなかったそのフザけた天候の中、有坂龍一はロープ渡河で校舎の屋上に渡ったのだ。
高広が指示した、校舎を見下ろす高台に建つビルの屋上には、一丁の改造したスピアガンが用意されていた。
スピアガン、水中銃のことだ。
先端には獲物を突き刺す針ではなく、三股になったフックがついていて、これを学校の屋上に引っ掛けてロープを渡せという意味らしい。
「まったく、思考がアニメなやつだ」
怪盗物のアニメなどでは、泥棒が建物に侵入する際にお馴染みのもの。
しかしそんな銃が、現実に通用するわけがない。
現実、スピアガンは手モリの延長にすぎない。
手モリよりは遠くへ飛ぶが、その分命中率は下がる。
海上自衛隊などは、漂流している船を捕まえるときにも使うそうだが、それでも精々数十メートル先の標的が対象といったところだろう。
それが、高広が指定したビルから学校の屋上の手すりまで、優に200メートルはある。
魚が降ってくるなんていう荒れた天候の中、チャンスは一回きりだと言わんばかりに、替えのない一丁のスピアガン。
銃による狙撃なら有坂龍一がはずすわけのない距離だが……。
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