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高広が予想した通り、イワシの雨は嘘のようにあっという間にやむ。
後には戸惑った声をあげて、空を見上げながら様子を見に出てくる人々。
学校を占拠していた犯行グループも、この冗談のような現象に、事態を把握するため見通しのきく屋上にあがってきた。
屋上に続くドアの影に控えるのは、有坂龍一。
階段を上がってくる足音で、相手が2人と判断した龍一は、ひとりが屋上へ出てしまうのを見計らって、続こうとしたもうひとりに、力任せにドアをぶつける。
『出来るだけ怪我をさせねーでくれ』
高広がくれた忠告を忘れたわけではないが、頭から降られたイワシの生臭さに、これ以上ないほど辟易している。
かけたゴーグルまで、砕け散ったイワシの内蔵まみれだ。
こんな格好のつかない登場もない。
八つ当たりのように、二番目の男にドアを叩きつけ、振り返ってこちらに銃を向けた最初の男に、低い態勢から顎を跳ね上げるように肘打ちを食らわす。
男の銃がはじけ飛び、仰向けに倒れたところを馬乗りになって、顔面に一発。
戦意喪失したのを見計らって手早く拘束する。
開きかけたドアをもう一度蹴り飛ばして、扉の向こう側に確かな手応えを感じながら、縛った相手の喉を絞めて、意識を奪った。
高広が予想した通り、敵の手応えは薄いし、仲間に知らせる手腕も悪い。
相手はど素人だ、と判断した。
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