2 立てこもり犯

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龍一が目を付けたのは、人質と犯人グループが占拠している教室のスプリンクラーだった。 普通教室には火災警報器だけだが、ここは理科室のせいか、スプリンクラーの設置が確認できた。 高広が教えてきた、他に校舎内をうろつく人間は、すでに龍一がすみやかに拘束してある。 小型のドローンを飛ばして校舎全体を赤外線センサーで探索し、単独で動いていた人間の影は全員捕まえたはずだ。 中に、トイレにこもって震えていた教師がひとりいたのは笑い話だが、龍一は容赦なくそいつも縛り上げた。 龍一の知る世界では、無能は罪でしかない。 そして残るは、教室に集まっている人質と主犯格のメンバーだけ。 それを一気に短時間で決着づけるために、スプリンクラーを作動させ、複数いる犯人を陽動させる作戦は、わりとポピュラーに使われる手法。 ポピュラーということは、その作戦に効果が期待できるという意味だ。 気がかりは、いまだ発見されていない爆弾の在り処だけだが、 「まだ見つからないのか?」 高広の耳に届く龍一の声はいらだたし気に尖っている。 爆弾が時限式とは考えられないことから、外部から電波を飛ばして遠隔操作が可能なものだと高広は予想している。 だったら外からの信号を受け取るために、爆弾が有するなんらかのパルスの波を、見つけることが出来ても良いだろう、と龍一は言うのだが、 「簡単に言ってくれるな。見つけた瞬間に、反応してドカンなんて可能性もあるんだぜ」 イヤホンに届く高広の言葉は物騒きわまりない。
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