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呆れるが、
「お前が無能なのが悪い」
龍一がインカムを通して言ってくる悪口は辛辣だ。
またそんなことを言いながらも、どんどんと作戦に向けて作業している様子が、高広の側にも伝わってくる。
「おい。あんま無茶すんじゃねーぜ。おい!」
さすがに通信を切ったりはしないが、龍一からの返答はいっさいなくなった。
「ちっ」
高広は舌打ちをする。
確かに龍一の手腕をもってすれば、死人は出さずにすみそうだが、ほんとうに死なないだけだ。
怪我人はまぬがれないだろう。
子ども相手に、無情すぎるやり方。
緊急を有する今それしか無いにしても、高広にはどうしても納得が出来ない。
何かが高広の中で引っかかっている。
高広にはゴーサインが出せない。
「感傷か?」
ほんの少しの時間でも、高広が教壇に立った、教え子たちが敵かもしれない。
その可能性が、龍一に電話したきっかけでもあるのだが、
「……違う」
高広の頭の中で、何かが引っかかっている。
指先に出来たささくれのように、つまんで引き千切ることは容易だが、逆に出血して大参事になってしまいそうな、そんな予感。
「なんだ。何を恐れてる」
爆弾が発しているはずの僅かな電気信号を、小型のドローンを操って探しながら、高広は金髪の頭をガシガシとかきむしる。
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