2 立てこもり犯

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呆れるが、 「お前が無能なのが悪い」 龍一がインカムを通して言ってくる悪口は辛辣だ。 またそんなことを言いながらも、どんどんと作戦に向けて作業している様子が、高広の側にも伝わってくる。 「おい。あんま無茶すんじゃねーぜ。おい!」 さすがに通信を切ったりはしないが、龍一からの返答はいっさいなくなった。 「ちっ」 高広は舌打ちをする。 確かに龍一の手腕をもってすれば、死人は出さずにすみそうだが、ほんとうに死なないだけだ。 怪我人はまぬがれないだろう。 子ども相手に、無情すぎるやり方。 緊急を有する今それしか無いにしても、高広にはどうしても納得が出来ない。 何かが高広の中で引っかかっている。 高広にはゴーサインが出せない。 「感傷か?」 ほんの少しの時間でも、高広が教壇に立った、教え子たちが敵かもしれない。 その可能性が、龍一に電話したきっかけでもあるのだが、 「……違う」 高広の頭の中で、何かが引っかかっている。 指先に出来たささくれのように、つまんで引き千切ることは容易だが、逆に出血して大参事になってしまいそうな、そんな予感。 「なんだ。何を恐れてる」 爆弾が発しているはずの僅かな電気信号を、小型のドローンを操って探しながら、高広は金髪の頭をガシガシとかきむしる。
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