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さっき、空から魚が降ったばかりだ。 まだ生臭いし、気持ち悪い。 そんな光景を目の当たりにしたばかりの学生が、いま置かれている状況を、この世の終わりだと思っても仕方がない。 空から降ってきているのは魚どころではなく、 ――隕石―― 映画で見たことのある終末の光景。 ハルマゲドン。 「死にたいのか、走れ、走るんだ!」 耳に届く声は、これ以上ないくらいに緊迫している。 「生き残りたかったら、走れ!」 ――この世の消滅―― そんな恐慌状態におちいった者にとって、立てこもりも強盗犯も、もう意味がない。 銃なんか、どんな意味がある? なんたって、隕石だ。 人質になっていた生徒たちは犯人が持っているはずの銃の恐怖も忘れ、ただ誘導員の声に追い立てられるようにして走った。 「体育館だ。体育館に行け。そこなら安全だ」 確信めいた頼もしい声に突き動かされ、ひたすらに前を向いて走る。 足を動かす。 体育館なら、この学校の生徒ならよく知る場所だ。 考えなくても勝手に足が動く。 「こいつも頼む」 気絶した誰かを、途中でひょいっと担がされたけれど、そんなことにかまっている暇もなかった。 少しだけ、 「あれ、こいつ、犯人のひとりじゃなかった?」 ちらりと頭をかすめるが、 「走れ。体育館まで死ぬ気で走るんだ!」 生死に直結したこの緊急事態に、足を動かすこと以外の、すべてを忘れた。
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