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そのシステムにいたく感動した様子で龍一は、
「ウチでも早く、こういう物を実用化してもらいたいものだな」
立方体の教室のひとつを建物の中から抜き出し、それをバスケットボールのように人差し指の上でくるくると回してみせながら言う。
「で、このクラスまるごとが、人質になっているわけだ」
「ああ、外からの赤外線センサーで見る限り、そのクラスの教師込みで32人と他5人の熱をそこに感じる。
声明を出した3人もここに含まれると予想できるが、校舎内を歩いている影もみえるな。
そいつらが逃げそこねた学生なのか、それとも犯人の一味なのか、センサーでは確証がもてない。映像がないから判断のつけようがないんだ。お前さんには現場で直接見て、判断してもらわなきゃならない」
犯人が学生だと予測した以上、立てこもり犯の外見だけでは、犯人と人質の区別は難しい。
犯人が制服を着て歩いていたら、生徒たちはどれも同じに見える。
凶器を持っているかいないか、また侵入者に対し敵意を抱いているかいないか、そんな直感だけで判断するしかない。
そんなもの、とっさに見極めることが可能なのだろうか。
しかし龍一は、
「その説明はさっきも聞いた。俺が判別を見誤るとでも?」
「いんや。お前さんの腕は信用している。だが相手は子どもなんだ。あんたへの不安は、子ども相手にムキにならないかどうかだけだよ」
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