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信じられない思いでフロントガラスに手を引っかけて前方を覗いてみれば、丸い大砲の筒のようなものが、こちらを向いている。
ヘリコプターの機体から半身を乗り出した男が、黒くてデカい筒先を、真っ直ぐにこちらに向けていた。
しかし、その大砲が向いている先には、トラックだけではなく、ビートルもいるのだ。
トラックとビートルは仲良く並走している。
だから、トラックに砲が当たれば、ビートルも無傷で済むはずがない。
「あれは、仲間じゃないのか!」
いきなり味方から砲撃される理由がまったくわからない。
しかもロケットランチャー!
ここはハリウッドではないのだ。
なんだって法治国家の日本で、いきなりロケットランチャー!
「龍一は派手好きなんだよ」
高広が忌々しそうに呟く。
「だから、好き勝手はさせたくなかったんだ」
そう言いながら、また激しくハンドルを切った。
セルゲイはドアに勢いよく頭をぶつける。
しかし、それに文句をつける気にはなれなかった。
高広がハンドルを切らなければ、このビートルは今ごろ、木っ端微塵に吹き飛んでいる。
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