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少しでも緊張のタガが外れれば、死人が出る事態になりかねない。
『早期解決が必要』
そう判断した高広は、元政府の秘密工作員、有坂龍一に連絡をとった。
「なんでお前が、テロリストの心配をするんだ」
電話の向こうで、いつも不機嫌な声の龍一が返事をする。
高広は、
「臨時教師で世話になった高校なんだよ」
「なるほど。人質も犯人も全員が高広の教え子。そういう訳か」
「まーな」
そしてまもなく、有坂龍一は秋場家に姿を現した。
「教え子が気にかかってる、それだけがお前の動く理由じゃないだろう」
「それだけだよ。だが犯人の要求は、セルゲイ・ラバスの釈放だ」
「なるほど。子どもの発想じゃないな」
すぐに裏の事情に思考を働かせる龍一に高広が教える。
「俺にだけ、警察とは別件の情報が送られてきた。やつらが占拠している学校のどこかに爆弾が仕掛けられているとな」
さすがの龍一も少し眼を見開く。
それはまだ、どこのニュースにもなっていない。
「もしかして、爆弾のことを犯人たちすらも知らないのか」
ふと尋ねると、
「ああ。学校を占拠しているあいつらは、都合よく利用されているだけだ」
案の定の高広の返事。
龍一は、
「高広。お前はどういう形でやつらに関わっている。その見えてこない、犯人グループの裏の奴らと」
問いただす声に、
「前に、奴らに爆弾を作れって依頼されたことがあんだよ」
高広はこともなげに答えた。
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