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しかし首都高を降りれば、すぐに一般道だ。
まさか一般道でも、このとんでもないカーチェイスを続けるつもりなのか。
その先の見えない恐怖に慄いたのか、トラックの運転手は、料金所の手前の少し広くなった道路の脇にトラックを寄せて止める。
そしてこの世紀の大犯罪者、秋場高広に立ち向かうために、運転手と助手席にいたもうひとりが、ゆっくりと車から降りてきた。
運転手たちが完全武装しているのは、すでに確認済みだ。
ビートルのフロントガラスに刻まれた銃痕が、生々しく証明している。
そして緊急通達が行き届いているのか、料金所から無謀に出てこようとする人影もない。
遠くからは微かにパトカーのサイレンの音。
どうやら、こちらに近づきつつあるようだ。
「高広、どうするんだ?」
恐る恐る尋ねるセルゲイに、高広は、
「俺だって、そう何パターンも準備する時間はなかったしな。ここはバカのひとつ覚えで許してもらうさ」
「バカのひとつ覚え?」
「そう。定番、定石。おばあちゃんの知恵袋ってな」
高広はニッと笑うと、ビーグルのヘッドライトをハイビームにして運転手たちの方へと向ける。
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