8 罠

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8 罠

当然のように料金所のバーを破壊して、高広が運転するトラックは逃走する。 しかし、いつパトカーのサイレン音が、すぐ背後に迫ってくるのではないかと考えると、セルゲイはとても落ち着かない。 「大丈夫なのか?」 セルゲイが膝を揺らしながら尋ねれば、 「ま、大丈夫でしょう。追ってくる奴がいれば、龍一が足止めしてくれる」 龍一とは、ヘリから狙撃してきた男の名前だ。 さっき輸送車もろとも、高広たちを吹っ飛ばそうとした。 「団体さんの先頭にいた護送車のワゴンを、俺たちの側へ近づけさせないでいてくれたのも、あいつ。無愛想なツラしてっけど、あれでなかなか仕事は出来る男なのよ。今ごろパトカーちゃんも、空のヘリを追っかけてるでしょ」 『パトカーを引き付けてる?』 セルゲイは首を傾げるが、 「あいつはロケットランチャー持ちだからな。追うなら、俺よりあっちが先」 高広はニシシと笑う。 『なるほど……』 確かに、あんな物騒な火器を所持しているとなれば、放置しておけるはずもない。 高広はタバコを取り出し、まず自分の口に咥えた。 そしてセルゲイにも差し出してくれながら、 「あんたも今のうちに吸っといた方がいーぜ。龍一の前で吸うと、撃ち殺される」 えらく物騒なことを言う。 でも、きっと真実だ。 出会ってからこの男、ずっと、冗談みたいな本当のことだけを口にする。 セルゲイはまだ震える指先で、高広が差し出すタバコの一本を抜き取る。
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