113人が本棚に入れています
本棚に追加
「それで、どこへ行くんだ?」
何度目かのセルゲイの問いに、ようやく高広は、
「ん、隠れ家だよ。あいつらとも、そこで落ち合う」
答えた。
セルゲイはやっと休息が与えられると聞き、かすかに息をつく。
これで、休める。
これ以上ないほどに疲れきっていた。
「おいおい、ぼーっとしてねーで、そこの無線機ぐらい壊せよ。後をつけられたら、帰って寝る間もなくなる」
人使いの荒い高広に、文句を言う気力も残っていなかった。
言われるままに無線機のコードを乱暴に引き千切れば、ピーッという断末魔の電子音だけを鳴らして沈黙する。
「ごくろーさん」
セルゲイよりよっぽど疲れているはずの高広なのに、まだまだ余裕の表情。
セルゲイと同じように爆弾を作る知識があり、セルゲイがかつて所属していたテロリストグループからも、
「俺も爆弾を作れと声をかけられた」
そう自己紹介した高広の言葉。
しかし頭脳労働者にしては、実力行使オンリーの実践派。
しかもその実力が本物であることは、疑いようのない事実だ。
セルゲイの目の前で刑務所から脱獄を果たし、核燃料を強奪してみせた。
味方につければ、どれだけの戦力になるか計り知れない男だ。
最初のコメントを投稿しよう!