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『神の門』
旧約聖書の中に、神の怒りをかい崩された、天にも届かんとする塔の話がある。
その塔が建てられようとした街の名前が『神の門』。
日本でいま活動が活発なテロリストは、不遜にもグループ名にその名を冠していた。
『神の門』のリーダー草壁隆也は、茶色いウェーブのかかった長めの髪をして、声のイメージより若くみえる。
「セルゲイ。いるんだろう。降りて来い」
草壁は親しげな声音でセルゲイの名前を呼ぶ。
しかし当のセルゲイは、不安そうな顔つきで高広に目を向けてきた。
高広が、
「どうした、お仲間じゃねーのか?」
皮肉な声音で聞けば、セルゲイは、
「そうだ、かつてはそうだった。だがお前が言ったんじゃないか。ワタシは見捨てられたと……」
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