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野にいる天才科学者の周りには、うるさい小蝿が飛び回るらしい。
ただ放っておいてもらえることは、ないのだ。
どことも知らぬテロリストグループから、秋場高広は目をつけられた。
「もちろん、断ったけどな」
しかしそのテロリストの存在を当局に通報することもなかった。
秋場高広はそこまでおせっかいな人間ではない。
「なるほど。だから真っ先にお前の関わった学校の生徒を立てこもり犯に洗脳し、ご丁寧に学校に爆弾まで仕掛けた。お前に袖にされた報復に出たわけか」
龍一の見解に高広は返事をしなかったが、疑いようはない。
高広は感じなくてもいい責任を感じている。
龍一は、なんでもない顔で、
「仕掛けられた爆弾の存在を警察には?」
「もちろん言ってあるが、公にはされていない。パニック必須だからな。だからSATも踏み込めない」
「なるほど」
龍一はうなずいた。
日本の警察は、あれでいてなかなか優秀だ。
もしも占拠している犯人グループが高広の見解通り、ただの子どもだとしたら、いくら人質がいても、隙をついて制圧するチャンスなど、いくらでもあったはずだ。
それなのに、これまでまったく警察側の動きがないのを不審に思っていたが、そういう事情なら納得できる。
立てこもり犯とは別に、爆弾を仕掛けた犯人がいて、そいつが、どこか別の場所から警察の動きを見張っている。
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