第1章

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 最近はインターネットも携帯電話も発達して、僕らは何時でも誰とでも電波や電子世界で繋がるようになった。 連絡先は簡単にいくらでも交換できるようになって、携帯電話でアプリを開けばそこにはこれまで出会った人の名前をずらりと並べて見ることが出来る。 その中にはふとしたきっかけで出会って長く付き合っている人も、或いは急に親しくなってでもある日を境に音沙汰も無くなってしまった人も、連絡を取らなくなってからもずっとアドレス帳に残っているだけの人も。  僕にも勿論そう言う人間が沢山いる。 色々な人間と関係を作りながら生きているのだから、古い人間ばかりにかまけてられないのは当然だ。 時間は有限である。 たまに彼らは今何をしているのだろう、と思うことはあっても別に連絡を取ったりはしない。 連絡しようと思えば何時でも出来る、そんな僕の投げやりな思いが彼らの名前をアドレス帳の隅で埃まみれにさせている。 彼らの顔を思い出すこと無く、平気な顔で埋もれさせている。  僕らは色々な機械を通じて何時でも誰とでも繋がっていると思い込み、実際のところは繋がっていないことに気がついていない。 僕はそのことに気がついた。 いや、気がついたという言葉は大仰だし、自己陶酔的で気に食わない。 あえて言い換えるなら、分かった。
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