第1章

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 電波で機械は繋がっている。 しかし、繋がっているのは機械の受信先だけであって人間じゃない。 何時でも連絡が取れることは、これまで人類が大切にしてきた人間関係とはまったく別のものなのだ。  僕らは機械で繋がることに慣れてきて、きっぱり「さよなら」をする機会を失ってきている。 何も言わないままに疎遠になることに慣れてきてしまっている。 そうして僕らは「さよなら」を言えなくなっていく。  もちろん機械がそんな普及していない時代にも「さよなら」を言わずに疎遠になる人はこれまでにも沢山いた。 でも僕が言っているのはそういうことじゃない。 精神的な意味で「さよなら」を言えなくなっているということなのである。 繋がっているという錯覚が僕らに「別れ」を忘れさせ、出会いだけを美化して観せている。 人間関係を曖昧にしている。  僕にはその曖昧さが何か悪さをするかどうかは分からない。 ただ、僕は「さよなら」を出来ない人間にはなりたくなかった。 曖昧に生きて、曖昧に死ぬくらいなら、死んだほうがマシだ。  ここに来て僕は僕自信がSNSやFacebook、LINEが嫌いな理由にようやく気がついた。 つまりはそういうことだったのだ。 以上。
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