プロローグ

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ドックン…ドックン…。 鳴り止まない荒い心臓の鼓動。 張り詰める空気、赤く光る丸い蛍光のハザードランプのみが薄暗いボイラー室内を照らす。 ボイラー室内は機械の作動音と換気扇の音だけ静かに鳴り響き、湿度の高いボイラー室内では、視界は薄暗いのに輪をかける様に霧がかっている。 「フゥー…フゥー…」 高鳴る心臓の鼓動と荒い息遣いを整え、 深呼吸を数回繰り返し冷静を取り戻す。 全神経を研ぎ澄ます様に、微かな音にも意識を集中し、太い鉄パイプの道管を背にして辺りを見渡す若い男。 「後、5発…」 若い男は両手に握るトカレフT-33のマガジンを取り出して、残弾数を確認し再びマガジンを直して握り直す。 「私は、後7発だけ…」 金髪のロングヘアーを後ろでピンで止めた、 若い男と同年代位の若い女は、自分の手に握らたベレッタM92Fの残弾数を若い男に答える様に返事を返して、残り7発の弾が入ったマガジンを戻し、ホルスターに銃を直した。 その華奢な身体に身に付けられた、ホルスターをキツく締め直す。 「ヘッ、そろそろ…ヤバそうだな、お前らだけでも逃げろ…」 2人の背には壁にもたれながら痛む右脚を伸ばし、顔色は青ざめて額から汗を垂らす、中年の特殊部隊の男。 男の右脚の脹脛はエグられた様に酷い状態で、 剥き出しになった骨と肉が飛び出し、尋常じゃない痛みが男を襲い続け、男の意識は半ば朦朧としている。 「そんな事、出来る訳ないでしょ!!」 女は振り返り男の発言に怒りを込めて否定し響かない様に声を上げた。 泣き叫びたい感情を必死に堪えながら、 女は男の瞳に二度と言わせないと言わんばかりに睨み付けた。 「お~怖い怖い」 男は鼻で笑い、おちゃらけながら言った。 しかし、笑いは直ぐに男の口元からは消えた。 それはもう時期に、やって来る…。 まるで自分の命の制限時間が時計の秒針音に見立てる様に聞こえ、男は不安な顔を2人に隠した。
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