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「そろそろ大丈夫です…立てますか?」
若い男は振り返りながら、怪我をした男に言う様に肩を貸した。
「へッ、悪いな…」
怪我をした男は若い男の肩に身を委ねる様にゆっくりと立ち上がりながら言った。
「私が先導するから…君は、”奴ら”が来たら直ぐにでも教えて…」
「ああッ…分かった」
若い女はホルスターにしまったベレッタM92Fを再び取り出して、若い男とアイコンタクトを取り合い、突き出して構える様にゆっくりと歩いて2人を先導し、薄暗いボイラー室の細長い道を奥へと進んで行く。
「お前に頼みがある…」
怪我した男は、足を引きずりながら歩き、
前を歩く若い女に聞こえない様に肩を借りて歩いている若い男に言った。
「…何ですか?」
「最悪の場合…お前にお願いしたい…
俺は、人として死にたい…
”奴ら”なんかに、なりたくない…」
怪我した男の願いは、若い男にとっても苦渋の選択をしいる。
そう怪我を治療すれば、無事に助かる…。
そんな生易しい世界は既に滅びてしまった。
彼の怪我はただの怪我ではないのだから…。
「着いたわ…」
若い女は後ろに付いて来てる2人に言った。
すると、若い男は目を閉じて、
集中する様に神経を研ぎ澄ました。
そして、若い男の見開いた目の両眼は緋色に変化していた。
「大丈夫…誰も居ない」
「よしッ、ここを抜けたらエレベーターが4箇所あるはずだ…右側のエレベーターが最上階に繋がっている、それで後は一気に上まで行くぞ」
怪我した男は、掠れる様な声で頭に入れてるタワーの構図を思い出しながら言った。
タワー最上階のヘリポートには、最後の救助ヘリがこちらに向かっているはずだ。
3人は頷き合い、息を合わせて扉のドアノブに手をかける。
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