君を想うが故に……

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――2XXX年    某インターナショナル博物館  一際混雑している展示会場内。  照明を落とした、厳かな雰囲気の中。  黒山の人だかりの中央には、青白い光に照らされた、神秘的な雰囲気を醸し出すガラスケースが展示されてあった。 「うわぁ~。これが21世紀に初めて生きたまま冷凍保存された人間かぁ~」 「すっげぇ! まるで眠ってるみたい」 「絵や写真でしか見た事がなかったけど。本当に、こんな姿してたんだなぁ。俺らの先祖って」  学生グループであろうか?  数人の若々しい声が、ケースの中の標本を指差し、感嘆の声を上げる。 「なんか、気味が悪いよね。頭は小さいし。変なところに毛まで生えているし。やっぱ、脳ミソがあんまり無かったんだろうなぁ」 「だから、この人の病気の治療法も見つからなかったんじゃない? 脳ミソちっちゃいから」 「そうそう。で、未来の医療に任せようって言って、生きたまま冷凍保存されたんだろ?」 「でも、もう何百年も前の話だから、カルテすら無いっていうオチ」  メディアやネット。  もしくは学校の授業からの情報だろう。  実際に目にした形状への感想から、徐々に標本に至った経緯へと話しが盛り上がっていく。
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