君を想うが故に……

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「じゃぁ、病名すらわかんないじゃん」 「解凍するまで、彼女の病気は分からないってワケか」 「じゃぁ、解凍してあげればいいのに」 「ばぁーーか。よく考えて見ろよ。それが伝染病だったら、お前、どうするよ?」 「それよりも。この冷凍保存って、昔の技術でしょう? 確か、点滴か何かで、細胞の劣化を防ぐための薬剤を投入して、血液の循環によって体内に浸透させたんだっけ?」 「そうそう。でもって、その後、血液と体液が抜かれ、代わりに不凍液とかいう、凍らない液体をいれたらしいけどさぁ」  彼らは医学生なのだろうか?  それとも生物学的なものを学んでいるのだろうか?  薄暗い部屋の中で語る彼らの会話は、他の見学者達に比べてかなり専門的である。  とはいえ、彼らがまだ若いというのは、落ち着きのない態度と、言葉遣いからよく分かる。 「馬鹿だよねぇ。凍らない液体を体液替わりにすれば、確かに氷の結晶が形成しないから、細胞の損傷は避けられるかもしれないけれど……」 「解凍した時、体液も血液も無い状態じゃぁ、治療よりも先に死んじゃうってーの!」 「だから、見たまんまなんだって! 頭ちっちゃくて、昔の人間はお馬鹿さんだったって事なんだよ」 「なぁるほど。いやぁ~。こうやって、実物の標本が残っているっていうのは、勉強になるよなぁ」  一通り標本を観察し、好き勝手なことを話した若者たちは、垣根のように囲んでいる人の合間を抜けて、混み合う展示会場を後にした。
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