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なぜ自分の名前が出てくるのかとクロウは疑問に感じたが、すぐに理解する。
「私の主観的な判断ですが、彼は他の囚人とは違って正気を保っていると思われます」
太った印象の低いこの声色は看守だなとクロウは判断した。立場は違う看守である彼だが、彼とは飯の時間に会話を交わすことがあった。
気さくなおじさんという印象で、五年前に彼がここの看守になってからの付き合いになるが、なかなか話の合う男だ。
デュークというもう四十路の中年のおじさんだが、大罪人であるクロウの言葉を真摯に聞いてくれる、珍しい看守であった。
デュークはよく囚人と会話を交わす看守のようで、そのおかげで精神をなんとか保っている囚人も少なくはない。
「正気ならそれはそれでいい事だ。クロウは罪を償わなければならないのに、自身の罪を忘れてもらっては困る」
若いハキハキとした声の主、レイアス・フィードは至って真面目にそう言った。レイアスは国家騎士団副団長を務める若きホープだ。
レイアスがこのような監獄に足を踏み入れたのは他でもなく、大罪人、クロウ・リュートの死刑執行が決まり、それを死刑場まで護送する役目を担ったからだ。
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