第1章

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閉め切られ密閉された門の向こうからは、時たま、断末魔の悲鳴が聞こえて来る事がある。 言い伝えに従うべきだという一派と、食料の確保が重要だという一派の間で話し合いがもたれ、結論が出された。 それは、背に腹は代えられず、天国で勝利した透明な身体を使い、地獄でも勝利を掴もうというものである。 彼らは、コンクリートで封鎖された門を砕き、地獄の門を開けた。 門が開けられた時。 門を塞ぐコンクリートを砕く音に引きつけられ、門の向こう側に集まっていた地獄の住人達が。 歓声を上げ、地獄に乗り込もうとした透明人間の一族を逆に弾き飛ばすように 、地獄から天国になだれ込んで来た。 そして透明人間達は、狩りの獲物となる。 二千年程前の明るさは無いが、電灯が灯る天国と違い。 二千年の間、灯りと無縁の生活を余儀なくされた地獄の住人達は、目が退化し、聴覚や嗅覚など目以外の感覚が著しく進化。 それら目以外の感覚を使い、弱肉強食の世界を生きて来た地獄の住人達にとって、身体が透明だというだけの獲物を見つけ出す事は、とても容易い事であった。
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