日夜君を思うては

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返事は威勢よく。行動は、そうは行かないけど。 「日子(ひこ)、日子、早く!」 「待ってってば、夜子(やこ)」 あちこちにがたがたとぶつかった。しょうがない、古い平屋を改築した建物なんだから。もう何年も住んでるくせして、あたしはこの家の不自由さに慣れない。あああお父さんが何故か買ってきたたぬきの置物が倒れるぅぅぅ!! 「夜子!ちょっと来て!」 「はいはーい?」 ぱたぱたと軽やかな足音がする。音の大きさから鑑みるに、夜子、お前すぐそこにいたでしょ。早く気付いて来て手伝ってよ。せっかく双子なんだから、それくらい、解りなさいっ。 「はいはいごめんね日子ーっ!今手伝うから」 「ごめんあたしより今すぐそのたぬたぬ助けてあげて」 「おっ、たぬたぬ倒れてる」 ふーふーふーふーふーふーんと何故か君が代を鼻歌に歌いながら、夜子がたぬたぬを救出する。その腕も、顔も体も声も、あたしと寸分たりとも変わらない。昔はみんなを騙して遊んだ。 「よし、行こうか日子」 今はもう、無理だけど。
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