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『異動が決まったんだ。シカゴに三年、……長ければ五年』
蓮が私にそう告げたのは、二人で過ごす五度目の冬が始まったばかりの頃だった。
『……そっか』
窓辺にかけられた、前の日におろしたばかりのライトグレイのコートに視線を送る。
数日前、私は昇格の内示を受けると同時に年明けから本格的に始動するプロジェクトの一員に選ばれた。プロジェクトへの参加は、今の部署に異動してからの念願だった。
そのおろし立てのコートは、蓮からの昇進祝いのプレゼントだった。
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