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蓮が刻むリズムで、私の世界はゆらゆら揺れる。
柔らかな風が吹いて、開け放たれたままの南側の窓から、ピンク色の花びらが一枚ふわりと舞い降りてきた。
蓮の背中越しに、薄い花びらに手を伸ばす。
「……あ」
ふいに、足元からせり上がる心地よさに、 ぱたりと音を立てて腕が落ちる。
薄い花びらは、私の手のひらを掠めることもなく、はらはらとこの部屋のどこかに散った。
ーーあなたを、引き止めたいわけじゃない。
ただ、覚えていて欲しかったの。
私への愛し方を
私の、あなたへの愛し方を
二人が一緒にいた時間に
あなたと私で築いたやり方を
あなたの片隅に刻みつけて
覚えていて欲しかった。
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