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「おい」
突然、声をかけられた。
鞄を持った仕事帰りの男性が公園の入り口に立っていた。
孝志だ。
今日は朝まで飲み会のはずだ。
帰ってくるはずはない。
そもそもなんでここにいるんだろう。
「駅降りたら、翔子が見えて」
朝まで飲むのは辛くて結局、帰ってきたそうだ。
わたしを見て、声をかけようと思ったが、
あんまりにも夢中に何かを追いかけてるから、
そのままそっとついてきたらしい。
「段々前かがみに歩くから、変質者みたいだったぞ」
と孝志は、おかしそうに笑った。
「そんなに猫が好きなら飼おうか?」
突然現れた孝志に、これは夢か?と思いながらも、
迷子の前に、お父さんが迎えに来てくれたような
そんなほっとした気持ちが胸いっぱいに広がった。
「猫飼わなくていいよ、たまに見るのがいいの!」
わたしはそう言って、温かい孝志の手を握った。
さっきまで暗くて小さかった公園に光が差した。
明るい夜空の下、
二人仲良く帰っていった。
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