図書委員

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「その本なら…」  すぐに棚に向かい、目当ての本を持ってくると、静沢さんはとびきりの笑顔で『ありがとう』と言ってくれた。  貸し出しの手続きの間中夢心地ででれでれしてた。だから、彼女が帰ってしまった後、もったいないことをしたという考えが痛烈に込み上げた。  何も言わずにいたら、静沢さんはもっと長いこと図書室にいてくれたのに、何で本の在り処を教えちゃったんだ俺のバカ。  その時はそう思ったけれど、貸出カードを見る限り静沢さんは読書好きらしく、俺がいる日もいない日も頻繁に図書室に通っているようだった。だから俺は、ちょっと気持ちの悪いことをしてるなと思ったけれど、カードで確認した彼女が借りた本を片っ端から読み、好きそうな本にも辺りをつけて、それらの在り処を記憶した。  おかげで、静沢さんが図書室に来た時には、本場所をすぐ教えることができるし、呼んでる本の趣味も合うということになって、会話ができる立場になった。  だいぶ卑怯でしょうもない真似なのは判ってるけど、どんな形だろうと知り合いになれたのは事実だし、六年生になった今も、クラスは違えど、顔を合わせば挨拶できる状態が続いているのも事実だ。  これはこれで嬉しいし、見に余る光栄だと思っているけれど、できたら中学に上がるまでには、もう少し確かな『友達』のポジションになりたい。  そんなことを思いながら、俺は、今年は年間通して立候補し、委員として週一居続けている図書室で、彼女の訪れを待ち侘びている。 図書委員…完    
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