平成28年11月28日19時25分

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「え……?」 横を向いた瞬間、トラックが見えた。 それはほんの数センチ。 ドスンと嫌な音が響いた。 視界が暗転する。 そこからは、全てがスローモーションのように見えた。 トラックの急ブレーキの音が聞こえて、にぶい音が響いた。 そう思う瞬間、視界が真っ赤に染まって、息が詰まった。 「っは、……」 「晴惹……っ!」 膝から崩れ落ちる。 道路の冷たい感触が頬にあたる。 それと同時に温かいものに支えられた気がした。 裕哉だと気づき、安心して身を任せる。 裕哉がぼやけて見えるな。ぽたぽたと、暖かいなにかが頬にたれる。 なんで泣いてるんだよ。裕哉。 言葉を吐こうとしても、 音がでない。 唇を開閉させることしかできない。 息も苦しい。 全身が熱い、熱い。 ああ、そうだ。裕哉に伝えなくきゃいけないことがあるんだ。 『、、、、、、』 聞こえたかな。届くといいな。 なんでだろう。ホトトギスの香りがする。 俺の好きな香り。 好きな人からいつもしていたから。 裕哉の声が だんだん遠のいていく気がするな。 それに なんだかすごく眠いや……。
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