第二話『プリティ・ウーマン』

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「チャンスだって?」 原田さんが大きな声を出した。 「バカなことを言うな! 探偵が尾行しているのに、なにがチャンスなんだ?」 「決定的な証拠を残して、原田さんと別れるためですよ」 「僕と別れる…………」 原田さんの頬が痙攣するように動いた。 「わけがわからない。僕と恋人のふりをしていれば、麗華は追加で三百万円を手に入れることができたんだぞ?」 「それなのに麗華さんはそのチャンスを捨てたわけです。変だと思いませんか?」 「いや。それは麗華が君たちの尾行に気づいていたという前提の話だろ? そうじゃない可能性のほうが高いはずだ。麗華は探偵の尾行に気づかずに共犯者の三木と会った。そして、詐欺の証拠を掴まれて観念したんだ」 「本当にそう思いますか? 麗華さんは頭が良くて気遣いができる女性なんですよね?」 「今更、麗華を信じられるわけないだろ! それに、あいつが僕のファンと言ったのもウソだったんだぞ。三木と麗華が繋がっていたのなら、僕の作品を読んでいるのは当たり前だ。僕は彼らにとって騙すターゲットなんだからな。そりゃあ、僕の小説だって読むさ」
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