第二話『プリティ・ウーマン』

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エントランスホールに出ると、ゴスロリファッションに身を包んだ亜里沙さんがガラスケースの上にいる黒猫のクロサワさんの頭を撫でていた。 「あれ? まだ、帰ってなかったんだ? バイトの時間はもう終わっているのに」 「そのつもりだったけど、クロサワさんが来ちゃったからね」 亜里沙さんは三白眼の目を細めて、クロサワさんに笑みを向ける。 その笑顔をお客様にも振りまけばいいのに。 亜里沙さんはホラー映画の話題以外は不機嫌そうな顔をしていることが多いからな。 外見は可愛いのにもったいない。 「で、そっちは仕事には慣れたの?」 「なんとかね。デジタル映写機の使い方も覚えたし、パソコンでのチラシ作りは前からやっていたから」 「私も高校がなければ、もっと仕事したいんだけど」 「なにか買いたい物があるのかな?」 「レッドピラミッドシングのフィギュアが欲しいの」 「れ、レッド…………? なにそれ?」 「『サイレントヒル』に登場する三角頭のクリーチャーよ」 亜里沙さんの瞳がきらきらと輝いた。
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