第二話『プリティ・ウーマン』

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最後のお客様がエントランスホールから出て行くと、僕は大きく背伸びをした。 これで今日の上映は終わりだ。 後は戸締まりをして試写室の掃除だな。 ついでに映画館のホームページ作りをやっておくか。 その時、ドアが開いて、女の人がエントランスホールに入ってきた。 女の人は二十代ぐらいだろうか、ショートボブの髪の毛を茶色に染め、唇には鮮やかなピンク色のグロスが塗られている。 黒いスーツは体にぴったりとフィットしていて、普通の会社員にしては目立ちすぎる気がした。 僕は女の人に近づいて頭を下げた。 「あ…………すみません。もう、上演は終わったんですが…………」 「大丈夫。映画を観に来たんじゃないから」 女の人は僕の顔をじろじろと見る。 「あなたが新しく入ったスタッフ?」 「え、ええ。そうですけど」 「ふーん…………暗そうで草食系っぽいけど、顔は悪くないか。体格は高校生みたいに華奢だけどさ。何歳?」 「…………二十三歳ですけど」 「私より三つ下か…………」 「えーと…………どなたです?」 「あ、私の名前は朝霧美亜。職業は探偵。よろしく!」
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