第二話『プリティ・ウーマン』

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「朝霧…………ってことは、千映さんの」 「姉よ。あの映画ジャンキーの」 「お姉さん…………」 僕は美亜さんの顔をまじまじと見つめた。 よく見ると、彼女の顔は千映さんによく似ている。 泣きぼくろはないけど、目の形はそっくりだ。 メイクの違いのせいか、気づかなかったな。 って、千映さんのお姉さんって探偵をやっているのか。 女性で探偵も珍しい気がする。 もしかして、美亜さんも人の心が読めるのかな? 美亜さんはエントランスホールを見回しながら、グロスが塗られた唇を開いた。 「千映はどこ?」 「出かけていて、まだ、戻って来ていません」 「あの子が出かけたってことは映画鑑賞ってことか。間が悪いなあ」 そう言いながら、美亜さんは僕の肩に手を乗せた。 「で、どこまでいったの?」 「福山市の映画館です」 「違うよ。あなたと千映の関係のこと。キスぐらいした?」 「しっ、してませんよ!」 自分の声がエントランスホールに響いた。
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